「寝室のオシャレは知的に」
たとえ部屋は狭かろうとも、すてきなインテリアに囲まれて暮らしたい、と考える人は多いはず。しかしいくらオシャレな生活をしようと思っても、高級な家具や新しい壁紙にもオムツやパンティが干されていては、台なしである。本棚には雑多なサイズの書籍が雑多な色で並び、雑誌もどぎつい表紙を主張する。加えて、キッチン用品は今だに花柄がスタンダード。生活小物や什器で、いつの間に部屋は繁雑な色で占領されてしまう。シャツやパンツという衣装は数も色も欲しいが、1日だけ着てクリーニングに出すまでもないブラウスが壁で踊り、散らかしたままの雑貨類。暮らしにくたびれた色調というのは、こうしたとりとめのない色彩の氾濫から始まる、とかのインテリアデザイナー。彼女が教えるインテリアのコツは、カラーセーブの意識とインテリアのめりはりだそうだ。
それらを解決して、知性ある暮らしをエンジョイするためには、見せるインテリアと見せたくないインテリアをはっきり区別すべき。他人には見せたくない下着や日常使いの食器は押し入れや扉のある戸棚にしまい込み、ちょっと自慢したい新しいドレスならガラス張りの家具に入れたい。同時に、大切にしている宝石や写真、置物は、周囲を整理してそこに焦点を当てる意識で飾るようにすれば部屋の印象は大きく変わる、というのが知的インテリアのコツらしい。
インテリアの哲学はそのまま住まう人の人生観でもある。生活の基盤がどこにあるのか、どういう生活を理想とするのか、どんな人生を送りたいのか、がインテリアを決定するのだそうだ。一例で、学生の四畳半の下宿には万年床が敷かれ、着替えも食べ物も雑誌も手を伸ばせば用が足り、テレビのリモコンもある。電灯につけられた紐を引けば寝たままでも点滅が可能という部屋が、若者にとって完璧な空間である。来訪者も気心の知れた友人ばかりだから気を使わないで済むし、仮住まいだから家賃も安い。
翻って社会的に地位のある人、来訪者の多い家なら、応接間がなければ日常の食事もままならず、家族の住まう部屋が必要だろう。賓客には高価な食器でもてなしたいし、家具調度品もそれにふさわしいものを揃えたいし、場合によっては複数の応接室を必要とするかも知れない。泊まる客もいるはずだ。来客に惑わされない書斎も欲しいし、趣味でお茶を嗜む人ならば茶室や水屋も欲しくなるに違いない。
来客の少ない家族が住まいの中心に応接セットを置くのは、見栄以外の何物でもない。日常生活が圧迫されてしまうのは、よほど広い家に住んでいる以外はバカげている。勤務が夜間の人にとって、日当たりは不要。外出が多い人は衣類の数も必要で、収納スペースは欠かせない。要は暮らしの中でのバランス。「ことに広い家に住むことが難しい、地価や家賃のバカ高い日本に住んでいる以上は、このバランス感覚やそれをクリアする知性が必要なのよ」と彼女は言う。そのために安い不動産を探すことは当然だが、住むことの分析と同時に、なるべくその空間を壁で仕切らないこと。部屋の角や隅とは物を置く以外はほとんど使わないデッドスペースになってしまう。壁で仕切ることでそのデッドスペースが増えてしまから、ロスすることになる。壁で仕切らずカーテン等で区分けし、部屋でなくコーナーとして使い分けると良いらしい。
そして寝室を最も重視するように勧めている。生涯の1/3を過ごし、連綿と営み育まれる寝室。仕事人間の亭主は家では寝室しか居ない?から、心から寛げるよう設計するべきという。納得のいく寝室つくりのために、彼女は家族のすべての性格、生活信条からその寝姿まで調べる。ベッドや枕の堅さの好み、その人の色彩感覚、性格を形成しただろう幼少時の出来事までを聞くにおよび、すべての人はそれに驚き、理由を聞いて安心し、次の瞬間に尊敬の目で見る。
そこまで調べて、それからデザインに着手する。だから彼女のデザインは評判が高く、長い期間にわたって不満が聞かれないそうだ。高いデザイン費用を取りながら、それでも発注者が後を絶たないのは、こうした高い知性と長いスパンを考えた住み心地が評価されているからだ。そして不備や使いにくさを感じたら、それは生活様式が変化したせいだから遠慮なく申し出るように、と伝えているという。